イカレポンチのうさぎ(13)

9月 5th, 2011

妻の仏壇には、妻の遺影の他にも写真が飾られているのだが、娘が生れた時に写真館で撮った写真も一緒に飾られている。生れて間もない娘の顔の所に、プリクラで撮った娘の写真が次々と貼り替えられていった跡がある。私と妻だけが年を取らずに若い頃のままの姿で、娘は成長していくのだ。「お父さんだって年を取っているのに、お父さんの写真はこのままでいいのか?」と訊くと「お父さんが年を取っちゃうと天国のお母さんが可哀そうじゃないか、お父さんとお母さんの年がどんどん離れていく」と言って俯いていた。だが娘にはアルバート君や、うさぎや人体模型という家族も出来、自分も少しは親離れしている様子を見せたくなり写真館に行く気になったのではなかろうか、とこれも憶測に過ぎないがそう思うのだ。2週間後に制服が届いた。私は、制服の入った箱を開ける寸前に大切な事に気が付いた。それはとても重大な事だった。確かラザニアを食べたあの日、2人は「デザイン画を渡した」と言っていた。私は、デザイン画を見てもいなかったし、おまけに仮縫いに立ち合う事が出来なかった。箱を開けるのが非常に怖くなった。アルバート君はとても良い人間だが、娘と似たイカレポンチ具合を発揮する事が多くあるのだ。娘の黄ミドリ色の服も気に入っているようだし、そんな2人がデザインした制服がこの箱の中に入っていると思うと私の脈拍はどんどん上がっていく。しかし、もう既に制服は出来てしまっているのだ。イカレポンチな娘とここまで生きてきたのだから、今更ジタバタしても仕方があるまい。私は少しだけ薄目にして、箱が開けられるのを見守っていた。娘が箱を開けた。箱の中には白い薄紙に包まれた制服がきれいに畳まれて入っていた。上下黄ミドリ色の制服を想像していた私は、驚きのあまり思わず声を上げてしまった。「素晴らしい!」制服に黄ミドリ色は使われていたが、いつもの蛍光塗料のような色でもなければ、カエルのおもちゃのような色でもないのだ。

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